日本のアメリカズカップ再挑戦に向けて

セーリングのシームレス化とアメリカズカップへの挑戦

2011年4月、河野博文JSAF会長が就任された直後、J-SAILING誌88号のインタビューで、シームレスという言葉を使ってセーリング界を巧みに表現されました。ちょっと長くなりますが、それを下記に引用します。
『近年のセーリングスポーツはジュニアからシニアまで、ディンギー、ウインドサーフィンから大型艇まで、シームレスなスポーツになりつつあります。この動きをさらに推し進めたいと考えています。  具体的には、小型ディンギーから大型クルーザーまで乗り手がスムーズに移行できる環境を整えたいと思います。 大学生セーラーが卒業後、途切れることなくセーリングを続けられるようにしたいのです。インカレが終わった後、ディンギーを続けてもいいし、ごく自然に大型クルーザーへ移行するセーラーも増えてほしい。 この動きを強めたいと、昨年のアジア大会ではキールボートのマッチレースに代表選手を派遣しました。 彼らはディンギーとクルーザーの接点に位置し、今後のシームレス化の推進役となってくれるセーラーです。予選ではどうなることかとハラハラしましたが、最終的には金メダルを獲得してくれ、当初の目標を達成することができホッとしました。 また、ジュニアの選手が必ずしも次の艇種や段階へうまくステップアップできていない状況が今の日本にはあります。 さまざまな事情があるのでしょうが、ジュニアを卒業した選手がもう1段階上のセーリングに移行できるような、シームレスな環境づくりをしたいと思います。 これについては、西岡一正副会長の指揮の下、すでに検討プロジェクトチームを設けており、各方面の方々のさまざまなご意見をうかがっています。 さらにもう1つ、シニアセーラーがジュニアセーラーを鍛える、あるいは育成・教育するというセーリングの良循環を整えたいと思います。 欧米のヨットクラブなどではよく見られる光景ですが、次世代へバトンタッチする、世代間のシームレスという観点から是非とも実現したい課題のひとつです。シニアの知恵と経験は、技術だけではない海の大切さをジュニアに伝えるものとしてシームレス化の重要なポイントだと思います。』
この発言の中にはアメリカズカップの言葉は出てきませんが、このシームレスな世界がうまく醸成されると、ごく自然にアメリカズカップや世界一周レースのようなハイエンドなヨットレースをめざす若いセーラーが生まれてくるのではないでしょうか。 今年の春、大学を卒業しオリンピックキャンペーンを展開しようとしている若い男性セーラーからアメリカズカップ委員会にメールが届き、そのなかで「行く行くはアメリカズカッ プに日本代表選手として出場するのが私の夢であります」とありました。これをして、すでにシームレスの動きが芽生えているというのは性急にすぎるかもしれませんが、このような意思の表明、夢を言葉にすることの積み重ねが、アメリカズカップを引き寄せることの第一歩につながると考えます。若いセーラーの口から、自分の言葉として出てくるこのような強い気持ちの発露には大いに勇気づけられます。 もちろん、アメリカズカップ委員会の植松眞委員長(JSAF副会長)はこのメールの送信者に対し即座に返信し、彼の志を称えるとともに、今後しっかり連絡を取り合おうと本委員会の姿勢を伝えています。

アメリカズカップへの挑戦の意義

日本がアメリカズカップへ挑戦することの意義は、
@以上述べてきたように、セーリングのシームレス化の中での、若いセーラーが目標とできるシームレス化のトップに位置する1つになるものであること。
Aそして、セーラーだけでなく、多くの人の目に触れることで、もっと多くの人にセーリングに興味を持ってもらい、セーリングの楽しさを感じてもらうこと。
B挑戦することで、世界に通用するセーラーが育ち、世界とのつながりを持っていける機会となりえること、そして、セーラーだけでなく、デザインや建造といった技術の面でも人材が育ち、 日本のヨット界を活性化していけること。
と考えています。

  • Photo by Kazushige Nakajima(http://dailysailing.com)

  • Photo by Takeo Tanuma

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